2005年 06月 21日
学生さんに、あなた経営者のマインド持ちなさいよ、というときょとんとした顔をします。アカデミズムの一番下っ端に向かって、何をいうのか、と感じるからでしょう。でも、これ真面目な助言です。あなたが、朝から晩までどのように過ごすか、誰が決めるのですか。大半はあなた自身でしょう。誰としゃべって、何をやって、何を見たり聞いたりするのを決めるのもあなたでしょう。将来の道を決めるのもあなたでしょう。大切な将来の道を自主的になおかつ場合によっては周囲の人の助言を入れて決めるのもあなた自身でしょう。あなた自身の人生の経営者はあなたですね。人のせいにするのはほどほどにしないと。あなたの研究指導者を決めたのはあなた自身ですよね。教授がいいと思ってそのラボにいったら、ひどい上級生につけられたとか(その逆もあるでしょうが)、しかし、それはあなたの調査が不十分かあなたがそのような状況に向いてると判断されただけですよ。ひどい大学院専攻に来たとか、ひどい研究室に来てしまったとか、嘆くのなら、別な大学院や研究室に変わればいいじゃないですか。それができっこないと思ったら、あなたはこの世界から足を洗いなさい。今からでも遅くないですよ。研究室主宰者が誇大宣伝をして被害者学生を勧誘するなどというのは、大学学部入学以来サークル勧誘などずっと知っていたことでしょう。自分の稼業ですよ、サークル選択などの甘っちょろい選択とはぜんぜん違うのです。被害の大きさは。この世界で始めに知るべきことだったのですから、それも知らないでは、自分の人生の運営は大変ですよ。でも、ご心配なく。20台は人生における失敗の宝庫なのです。失敗毎に人間は大きくなっていくのです。失敗を糧にするのも、あなた自身の人生の経営マインドにかかってるのです。わたくしなんかも、人には言えない若い頃の失敗沢山ありますよ。でも改めるのに何も憚らなかったですよ。 つぎに、あなたは自分の社会性の有無について、自ら多大な関心を持たねばなりません。自分は、周囲で人気が無いな、と思ったら、人気のない人間はいかにして人生を生きぬくか、真面目に考えなさい。ほどほどの人気が出るように、自分をぼちぼち変えなさい。でもあなたは孤高の人生を歩みなおかつ三度の食事も自分の甲斐性で購える自信が十分おありになるのなら、社会性などは忘れて我が道をいけばいいでしょう。自分は異性にもてたい、とおもう若い男女が、それじゃどうするか日夜考えるのは、「愛」を人生の最大の目標にする人達にはあたりまえのことですね。「研究を稼業にしたい」とついつい思ってしまった、あなたはやはり、研究稼業を続けるのなら、いかにして他人との関係をスムースにするか、コミュニケーションをちゃんとするか、そのうえで相手にどう好感を持ってもらうか、考えなさい。研究とは他人とのコミュニケーションですよ。おもしろいこと発見して、一人でずっとにたにた笑っていたいのですか?どこにも発表せずに。それとも、誰かがあなたの発見を「発掘する」のを待ってるのですか? もしもあなたが、博士後期課程の2年くらいで隣の研究室や異なる大学の分野の似ている研究室で、年が5年以上(もちろん40才上でもいいのですよ)うえの先輩的な研究者と親しい関係がなかったら、あなたの将来はかなり厳しいでしょうね。先輩研究者と談笑する能力は研究稼業で最も大切なものの一つです。同輩としか話しが出来ない人達、自分のラボの人間としかつきあえない人達はこの世界ではほぼ落伍者です。そうなりたくなければ、イヤな奴らとおもっても、先輩連と話しをする訓練を自らに課しなさい。 先輩研究者がもしも、将来自分がラボを持ったら、一緒にやらないかといわれるようなことが大学院中に複数回あれば、あなたはたぶんこの世界でご飯を食べていけます。食いっぱぐれは無いはずです。ただ、自分を安く売ってはいけません。安く売ってしまって、どうにもならなくなる人は多いですね。研究稼業にはトップとボトムの両方がありますよ。トップを目指す人はボトム(失職など)に合う機会も高くなります。トップでもなくボトムでもない普通の生活を望む人が多いのは当たり前です。トップを目指す人はいろんな義務がついてきますよ。 何を目指すにせよ先輩的な研究者との交流がほとんどないとかなり厳しいです。まずそのあたりを自覚してください。それじゃどうするか、今日のブログの最初に戻って読み返してください。自分が自分の人生の経営者であることを再確認してください。 それじゃ、もう一つ、生きぬくためのアドバイスです。あなたが生みだす、データのことです。データを生むこと、当たり前ですが、これが院生稼業の一番大切なところです。アカデミズムの最底辺にいる以上、上の方にいる、口だけで頑張っている人達とは違うのです。大学院生は、自ら馬車馬(今じゃ流行らない例えですね、見たこともないでしょう。でもわたくしは見たことあるのですごくリアルな例えです。これ以上よい例えはおもいつきません)とおもってデータを出さねばなりません。文句を言われたら、その文句に理があると感じるのなら、文句を言われないようなデータを出すべきです。この点に徹底すべきです。論文を投稿しても、最後の一人の批判者までもが黙ってしまうようなデータを出すべきです。こういう気迫を持つべきです。その気迫は周囲の人間にも分かるようになります。気迫のある学生さんは、周囲がほっておきませんよ。理不尽なこともおきにくいものです。駄目とおもっても、なるべくならTKOを自分が自分に宣告しないように。できたら、周囲が出してくれるといいですね。でも周りにそんな人がいなければ、自分で自分のレフェリーになるのですね。完敗するのもいい経験ですよ。 優れた外部の訪問者が無いラボでは、ポスターを出して、学会で一流の先生に見てもらうべきです。来てくれなければ,会場で呼びに行くべきです。かくかくしかじか、説明してあなたの熱意を示せば来てくれるはずです。わずか5分でもいいから、展示中に来てもらってデータを見てもらいなさい。それらのデータをもとにどんなお話をあなたがつくったのか、聞いてもらいなさい。真に一流の先生なら、ひと言あなたがはっとするようなことを言うか、それとも肺腑を抉るようなことを言ってくれるはずです。そうでなければ、それはあなたの理解が鈍いのです。ごちゃごちゃ話し出して3分以内に自分の一番大切なデータのポイントを相手に伝えられないようなら、せっかくのデータも泣いてしまいます。
by yanagidamitsuhiro
| 2005-06-21 16:06
|
アバウト
カレンダー
カテゴリ
以前の記事
2021年 10月 2021年 05月 2021年 04月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 07月 2020年 01月 2019年 12月 2019年 06月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 お気に入りブログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||