2007年 09月 21日
まだ外は暗い早朝に起きて、かなり返事がたまっているメールの返事などをしました。また、メールは読んでいて返事もしているのですが、添付ファイルをちゃんと見てないのをいくつも時間をかけて読みました。そのうちまた眠たくなってうとうとしました。昨夜遅くまでみなさんと時を過ごしたからでしょう。 妻が東京に彼岸でいってますので、朝飯準備、猫の世話、水やり、などをしました。水やりですが、すごくちいさなヒマワリが一本あって、それにまた小さな虫がとりついているのが、なにか滑稽でした。 Aさんの論文もかたちになってきて意見を聞く段階となりました。研究室外の素人一人と、専門家一人にとりあえず読んでもらうことを、頼みました。この週末からはオスロとギリシアでの講演の準備も始めたいので、きりをつけたいのです。K君の原稿のほうも、いちおうこの先の完成化にむけての段取りについてメールを書きました。それからA君の仕事もだいぶかたちが見えてきているので、ラボにいってからは、ずっと彼と議論をしました。 手帳で予定を見ると、もう終わりのほうになっています。いつのまにやら一年のほぼ4分の3がすんでしまいました。 まだまだ暑いですが、しかしことしもそろそろ終わりに向かうのかと思うと、寂寥感はかなりあります。しかし、秋の頃の良さもこれから味わえるので、それはそれで楽しみな面もあります。 昨日、JSTのセンター長をされている生駒敏明氏からも、わたくしの書いたブログに対する回答を頂きました。お忙しい中を、北澤さん、生駒さんお返事を頂き深謝する次第です。生駒さんのもかなり長いものなので、きょうはここに全文を示すだけにいたしましょう。生駒氏は東京大学生産技研研究所教授や日本テキサス・インスツルメンツの社長、会長を歴任され、JSTの研究開発戦略センター センター長をされています。なぜお手紙を書かれたのかは、読まれるとわかりますが、今回のCRESTの分野設定に深くかかわっているというか全面的な責任をおもちのようです。国策研究とか競争的研究資金に関心を持たれるかた達にはお二人からの回答はかなり興味を持って読んでいただけると思います。特に生駒さんのかんがえはわたくしとは著しく異なりますが、一方で明確な方針をもって行政サイドで力をふるってるわけですから、ともあれ生駒さんのかんがえは十分に理解する必要がありそうです。なお北澤さんからもその後追加のご意見が来ているのですが、別な機会にそれも示したいと思います。なおこれらをここに掲げるのは、ご本人からの許可はもちろん得ています。 柳田先生 JST 研究開発戦略センター長 生駒俊明 拝啓 永らくご無沙汰いたしております。小生は現在科学技術振興機構(JST)の研究開発戦略センター(CRDS)のセンター長をしております。センターのミッション等についてはJSTのWebをご参照ください。一言で言いますと国の科学技術政策を立案し、戦略プロポーザルとして関係各省に提案することです。そのために各研究分野において、専門家を集めて分野俯瞰ワークショップ、未来戦略ワークショップなどを複数回開催し、当該科学技術の海外比較を行いながら、いわゆるエビデンスベースで政策立案をしております。設立後4年を経過し、少しずつ日本のファンディングが変わりつつあると思料しております。 さて貴兄のプログでJSTの戦略創造事業に関する批判意見を拝見しました。その中で責任者が出てきて説明責任を果たせと発言しておられます。戦略創造事業の責任者は北澤理事でありますが、貴兄がご指摘のデペンダビリティに関するプログラムは当戦略センターの戦略プロポーザルに基づき、文科省が決定し、JSTの戦略創造事業部が実施しているものです。したがって貴兄が指摘の内容の大部分は当センターに責任があり、その長である私に責任があります。したがって私から説明をする必要があると思って筆をとっている次第です。 元来JSTの戦略創造事業は国の政策課題を実現するためのトップダウン型ファンディングシステムと定義され、文科省が戦略目標を設定し、予算枠を確保して、JSTがそれを受けて研究を公募し、総括の下で研究を実施するシステムを取っています。これがJSPSのボトムアップ型の科研費との相違点であります。しかし過去の戦略創造事業、その中でも貴兄が問題にしていますCRESTは、戦略目標を極めて広く曖昧に定義し、多くの研究者が応募できるように設定し、応募者の多いことを良しとして運営し、さらに採択された研究者には、自由に研究してもらうというスタイルを長年続けてきました。そのため、研究者からはありがたがられていましたが、反面、これではJSPSの科研費と実質的な区別がなく、第2科研費と陰口をたたかれ、その存続に疑問の声があがっています。採択された研究者も科研費との区別なく研究を進め、成果報告会でも科研費の研究報告となんら変わらない状況です。しかし、科学技術関連の政府投資がこれだけ巨大になった今日、CRESTなど戦略的創造研究事業は本来のあるべき姿に戻さなければならないのです。すなわち、国が特別に支援すべき研究領域、課題にファンディングし、トップダウンに明確なゴ―ルを設定しで研究を進め、わが国の研究を将来重要となる方向へ誘導していかなければならないのです。 ボトムアップ型のファンディングは研究者の研究の自由が保証され、研究者にとっては貰い勝っての良いものですが、多くの研究は論文を書くことで終了してしまい、社会への還元が行われていないという批判があります。特に第2期基本計画終了までに40兆円以上が投資されたにもかかわらず、その成果が社会に還元されていないという批判が聞こえてきます。私自身もそのような意見を持っています。 当センターで提案しましたイノベーションを指向した科学技術政策が第3期基本計画に盛り込まれました。 研究が単に論文を書いて終わりというのではなく、その成果が有効に活用され、社会経済的価値の創造に貢献して始めてその任務を果たしたことになるという考えです。 この考えを研究者コミュニティに普及させる必要があります。したがってJSTはイノベーションを誘発することをその重要な役割と明確に定義して、ファンディングのシステムを変えようとしております。したがってCRESTも第2科研費から脱却し、真の政策誘導型のファンディングへ変えるべきであり、その役割の一翼を担っているのが当センターであります。すなわち各CRESTは研究の戦略的な目標を明確に設定して、研究者の英知を結集してその目標を研究期間終了時に達成していただくという厳しいスタイルに変えるべきであると思料します。この考えは文科省からも支持されています。すなわち科研費が「研究者がやりたい研究」または「やれる研究」にファンディングするのに対して、CRESTは「やるべき研究」「やらねばならない研究」にファンディングするという違いです。国税でまかなわれる国の研究投資にとって、このことは極めて重要で、当センターでは将来重要となると考えられる研究領域や研究課題を抽出して、国が支援すべき研究領域、課題を提案しております。これからCRESTの戦略目標の一部が設定されます。 わが国の研究者はどうしても自分の過去の研究領域や自分の分野に固執して、新しい分野へ進出できない傾向にあります。アメリカではPOによる予算執行によって新しい分野の開拓に研究者を誘導しています。私は、戦略的創造研究事業はこのような役割を担うべきであると考えています。この考えは必ずしも戦略的創造研究事業の担当者間には浸透していません。従って多くのCRESTは昔のスタイルで実施されております。その中で貴兄の目にとまったIT関連のプログラムは新しい挑戦型のプロジェクトで、明確なゴールを設定して、各チームが自身の研究のベクトルを少々変更してでも、ひとつの目的を達成していただくという今までにない研究スタイルを採っています。そのためには総括に強い権限(編集権ともいえるもの)を与え、予算執行にも自由度を持たせ、あらかじめ研究チーム間でよく協議した上で、テーマ分担をして期限内に本当のまとまった成果をあげてもらうというものです。そのために、総括やアドバイザーには従来とは全く異なった責任と権限を付与しています。ちょうどアメリカのARPAの挑戦的なスタイルを一部真似ています。その中でも試験的に走らせているのがデペンダブル組み込みOSのグループで、総括にはソニーの所氏、副総括(普通はいません)に早稲田の村岡氏をあて、アドバイザーには大学人のみでなく、企業人をも配し、さらに研究推進委員として企業で実際に研究開発に携わっている人達を一種のメンターとして当てています。研究開始に当たってはこれらのメンバーで熾烈な討論を行い、合意に達したうえで研究を進めています。達成すべき目的のハードルがかなり高いために、2年目の応募者の中で該当する者がいなかったのは不幸でしたが、あえて妥協せず本当にゴール達成に資する研究者を選定する方針をとったと聞いています。 このような推進方式を採っているのは主としてIT関連分野ですが、これは大学の基礎研究が論文で終わったのでは研究者の自己満足にすぎない、実用になってこそ初めて基礎研究も研究としての価値が生ずるという特徴によるところ大です。現CRESTでは、「低消費電力システム」と「デペンダブルVLSI」がその範疇に入ります。この種のプログラムは総括に大きな負担がかかります。また責任も大きくなりますが,この3つのプログラムの総括は私心を捨ててまことに献身的な働きをしておられます。また透明性も十分保たれています。貴兄の言う癒着などという言葉は見当外れの批判であると思います。 さらにIT以外の分野でも研究者の自己満足で進められている「基礎研究」は多くあると私個人は見ています。したがって他の分野でも、CRESTはこのような共通の高いゴールを掲げて研究を公募する形に変えていく必要があると感じています。この考えに賛同してくれる人もかなり居りますが、JSTの中にはこれに抵抗する人々もいます。特に戦略的創造研究事業の担当者レベルでは私の考えに抵抗する人も多く、「応募者の数が多ければそのプログラムは成功、先生方が喜んで研究できれば成功」と思っている人々がいます。しかし日本全体の研究予算の使い方から見れば、科研費的なばらまき予算を今以上に増やすことは許されないことです。さらに日本の研究者が将来を見据えて自分の研究分野を果敢に変更し、積極的に新分野を開拓していく努力を応援する必要があると思料します。 したがって、われわれのセンターでは、将来重要となる研究分野・領域を提案し,そこへファンディングすることによって、研究の進むべき動向を提示していきます。こうした新たな研究分野には往々にして研究者の数が少なく、したがって応募者の少ないテーマも有ります。それでも、そこへ勇気を持ってファンディングすることによってわが国の研究を正しい方向に誘導していきます。また文科省でもこの種の新たなファンディングの仕組みを立案中と聞いています。CRESTなどのJSTの戦略的創造研究事業も変わらねばならないのです。また総括の役割と責任も変えねばなりません。真にイノベーションを誘発する仕組みを作る必要があります。貴兄がご指摘のテーマはまさにそのような試行のひとつです。 このような将来重要となる分野にファンディングする際には、今までの戦略的創造事業とは異なったやり方をする必要があることも分かりました。また研究分野によって違ったファンディング方式をとる必要があるかもしれません。このような点はさらに問題を掘り下げて改良していく所存です。 このような構造改革はさまざま抵抗に会います。しかし日本の科学技術・イノベーション政策を実あるものにするには改革を進める必要がありますので、貴兄にもよく理解して頂き改革推進にご協力ください。 もし必要であれば公開でも、非公開でも貴兄とお話しする用意があります。ご提案ください 敬具 平成19年9月20日 (なお 上記見解はJSTの中で承認されたものではありません。センター長個人の見解とご了解ください)
by yanagidamitsuhiro
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